「愛社精神」という言葉は死語かもしれませんが、社員が会社のことをどれだけ好きか気になる社長は多いと思います。
クライアントの社長と二人きりで話していると「あの社員は会社のことが好きで、あの社員は嫌いなはず」と無意識に評価しているのが分かります。
しかし大抵その評価は間違っています。男性を過大評価して、女性を過少評価していることが多いです。
「社長に一生ついていきます」という態度を見せる男性社員よりも、会社は給料を得るためだけの場所と割り切ってそうに見える女性社員のほうが会社のことを好きということは多々あります。
ということで今回も「男はこうだ、女はこうだ」という時代にそぐわない内容です。
ちなみに男女差別を煽ろうとかいう意図はなく、あくまで私の経験から言える傾向の話です。
裏切りは女のアクセサリーではない
映画『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』で峰不二子が「裏切りは女のアクセサリーよ」というセリフを吐きます。
この例を挙げるまでもなく、男性よりも女性のほうが薄情だとか、見切りが早いというイメージを持っている人間は多いかもしれません。
しかし会社という組織において「御恩と奉公」を大切にするのは男性より女性の方が多いです。
男女の色恋沙汰ではどうだか知りませんが、会社という組織においては私の見てきた限り女性の方が裏切りません。
なぜ女の方が裏切らないのか?
会社を経営していれば社員の裏切りに遭うこともあります。
横領や情報の持ち出しといった刑事罰の対象となるようなものから、仕事をサボるとか、陰で会社の悪評を広めるなど様々です。
私の知る限りこういった裏切り行為をするのは男性のほうが多いです。
犯罪白書でも横領犯の男女比は8:2くらいだったはずです。(金を管理できる立場にいる人間の男女比は考慮されていないことに注意は必要ですが)
なぜ男性の方が裏切りやすいのかというとそれなりに理由はあります。
「飲む・打つ・買う」は男の領域
横領した金の使途として多いのは酒、ギャンブル、異性です。
ほとんどの文化圏においてこれらの趣味を持つのは男性の方が多いです。人間という動物のオスがそれを好きなように出来ているのだと思います。
俗にいう「飲む・打つ・買う」といわれるものですが、これらの共通点は正常な判断を狂わせるということです。
つまり男性のほうが横領する動機が起こるリスクが高いのです。
もちろん男性に貢いでしまう女性もいますが、この場合は風俗などで働いて金をつくるパターンの方が多いように思います。
ビジネスパーソンとしての自分を客観視できるのは女
経営コンサルティングの仕事を始めてからハッキリと分かったことですが、ビジネスパーソンとしての自分の能力を客観視できる能力が高いのは男性よりも女性です。
男性は実力に見合った仕事を与えられても「こんなレベルの低い仕事をするために会社に入ったのではない」と言い出す無能がけっこう多いですが、女性では少ない。
それどころかどんな小さな仕事でも大切に扱いますし、やりがいを見つけます。そしてそういった仕事を与えてくれる会社のことが好きという人間が多いです。
そのため、個人的な出費を会社の経費として請求するようなこともしません。出張先で男を買ったなどという女性にはお目にかかったことがありません。そういうサービス自体が少ないというのもありますが。
「あれだけ目を掛けてやったのに裏切りやがって」と恨む前に
目を掛けていた社員が転職してしまうと「裏切られた」という経営者がいます。
社員が辞めてしまう理由は、成長できないとか、仕事が面白くないとか、人間関係が嫌になったとか様々です。
そして、そんな環境しか用意できなかった経営者の責任も小さくはないのですから、あれこれと文句を言うべきではありません。
とはいえ社員に辞められるショックが大きいのはよく分かります。経営者としての能力まで見くびられたような気持になるかもしれません。
しかし、どれだけ素晴らしい環境を用意しても成長のためには転職が当然の手段と考えている人間もいるのですから割り切ることも大事です。
それまでに掛かった人件費以上のリターンをもたらしてくれたのなら良しとしなければなりません。むしろ何百万社もある中から当社を選んでくれてありがとうと感謝すべきです。
投資額とリターンという考え方をする女は多い
ちなみに「自分に掛けられている人件費以上の仕事ができているだろうか?」という意識を持って働いているのも女性の方が多いです。
私が会社員だった頃に仲の良い女性の先輩がいてお互いに投資が趣味だったのでよく株や為替の話をしていました。
そして私が会社を辞める時にその先輩が「会社はあなたから何%のリターンを得たかな?ROI(投資利益率)は何%だ?」と冗談っぽく言いました。
これは決して嫌味などではなく単なる冗談なのですが、普段から自分が会社にどれくらい貢献しているかを意識していなければ投資が趣味でもサッと出るフレーズではありません。実際にその先輩はどんな仕事も大切に扱っていました。
新卒で入った会社で1年目から生意気だった私に「給料分も働けてない奴が偉そうなこと言うな」と叱ってくれたのも他の女性の先輩でした。
もちろん男性でもそういうことを言う人間はいるのですが、根底に投資金額とリターンという意識を強く持って言うのは圧倒的に女だと思います。
スーパーの買物でもコストパフォーマンスを考えるのは女性の方が多そうですが、掛けた金と得られる利益を常に意識するのは女性なのではないかと思います。
「御恩と奉公」を守ろうとしなかった人間を叱ったのは北条政子
まだ私が若かった頃にある赤字会社のコンサルティングを請け負って全社員の前で説明をしているときに、少し会社を馬鹿にするようなことを言ってしまったことがあります。
そのとき全員が俯いてしまったのですが、後から一人の女性社員が私のところに来て「会社を馬鹿にするのはやめてもらっていいですか」と目に涙を溜めて抗議してきたことがあります。
それを知ったその会社の社長は非常に驚いていました。なぜならその女性は会社が危なくなればさっさと他の会社に転職していくと思っていたからです。
しかし社長が思っている以上に会社に対して愛着を持っていたのです。彼女からすれば学校を出て初めて就職して先輩や上司から色々と教えてもらいながら成長してきて、これから恩返ししていこうと思っていたときなのです。
どこの馬の骨とも分からないコンサルタントがやってきていきなり会社を馬鹿にすれば怒るのは当然でしょう。
男性経営者というのは女性社員に対して無意識に「淡々と仕事をこなす冷めた社員」というイメージを持ってしまいがちです。
しかし思っている以上に熱い想いを持っていたり恩を感じていることはあるのです。これは財務諸表には表れない会社の最強の資産です。
「御恩と奉公」という仕組みを考えたのは男性でしょうが、それを守ろうとしなかった人間たちを叱ったのは北条政子です。
「裏切りは女のアクセサリー」と言いますがアクセサリーが嫌いな女性もたくさんいるのです。そもそもこのセリフを言ったのは峰不二子ですが考えた原作者は男性です。
勝手なイメージで「女は組織を裏切る」などと評価してはいけません。