経営者が「勉強会」と称した集まりに参加するのは危険

去年もいくつか経営者の勉強会に呼ばれました。

基本的にそういったものへの参加は断っているのですが、断れないこともあります。

コンサルティングが入っていると言うと、他の経営者も「どんなもんよ?」と興味が沸くのでしょう。コンサルタントは会合に呼ばれがちなのです。

とはいえ批評するような態度の経営者は少なく、素直に話を聞くという態度の人が多いです。

ちなみに私はそういった集まりで話すようなネタを持ち合わせていないので、何を話せば良いかいつも困ってしまいます。

抽象的な精神論みたいなものを話すことには抵抗があります。

なので具体的に何をすれば利益が出るかという話をするようにしています。

去年はインターネットを使ってどのように集客するかという話をよくしました。

今さら新しいことでもないのですが、この話が未だになぜかウケるのです。

いかに中小企業のIT化が進んでいないかということだと思います。このままだとAIやDXのネタがウケるのは30年後かもしれません。

私に依頼しようとするのは問題

経営者の勉強会で具体的な話をすると驚かれることが多いです。新鮮なのだと思います。

そして、そのまま「仕事を依頼したい」と言われることもあります。残念ながら競業避止の関係で受けられないことのほうが多いですが。

ただ、経営者の勉強会で私の話を聞いて、依頼しようと考えてしまうのは少し問題だと思います。

なぜなら私の話すことの大半はネットで検索すればすぐに分かるようなことですし、経営者なら当然知っていなければならないことだからです。

そこに気づかずに、私の話が素晴らしいと感じてしまうのは、勉強会というものに問題があるのではないでしょうか。

経営者の勉強会が危険な理由

経営者の勉強会をいくつか見ていると「もったいないな」と感じます。

せっかく経営者が集まっているのに、「経営とは」といったマインドの話に終始していることが多いからです。

鬼籍に入られましたが、京セラの稲盛和夫氏のような人物が主宰する勉強会であれば、それでも全く問題はないと思います。あれだけの実績を残した経営者の思想に触れれば得るものがあるでしょう。

しかし、他のメンバーより経営者歴が長いだけの人や経営コンサルタントが主宰として経営論を語ったり、同世代の仲間で集まって討論したりしている勉強会というのは危ない気がします。

意味のないことをしているのに、成長につながっているような錯覚に陥るのではないでしょうか?

経営者は孤独なうえに、強いプレッシャーも受けます。死にたくなることもあります。

そのため、勉強会などの集まりに参加することで、安心感を得ることができるのかもしれません。

しかし、その「安心感」を「成長」と勘違いしてしまうのは何もしないより危険だと思います。

マインドにフォーカスするとテクニカルなことを軽視する

経営者の勉強会が全てそうだとは言いませんが、マインドにフォーカスしたものが多いです。

マインドにフォーカスするとテクニカルなことを軽視しがちになります。

そのため、ちょっとネットで調べれば分かるようなことさえ気づけなくなってしまうのです。

マインドにフォーカスした経営者の勉強会に参加することで、大局的に物事を見ているようになったつもりでも、実は視野を狭めているのではないでしょうか。

中小企業にとって即効性のある施策はテクニカルなことの場合が多いです。

会社が潰れてしまっては「経営の心得」もクソもないのです。

現役の経営者が勉強会で経営論を語り合うのは、プロ野球選手がスイング練習をせずに「野球道とは」と議論しながらホームランの本数を増やそうとしているのと同じではないでしょうか?

意味のない課題を出す勉強会

中には「来週までにこの本を読んでレポートを提出するように」と課題を出したり、グループチャットで討論しているような勉強会もあります。

そして、その課題のために忙しくなって仕事に支障が出ているという本末転倒なパターンもあります。

そもそも、この手の課題もその効果を定量的に検証したものではなく、主宰している人間の単なる思い付きでやっているようなものが多いです。

このタイプの主宰者は松下村塾の吉田松陰にでもなったかのように自分を高い位置に置いているので、無駄なことをさせているという認識を持つことができないのです。

彼らは「辞めさせた方がいい社員の性格=ダークテトラッドを持っている」の中で紹介したナルシシスト的な性格傾向を持っているといえます。

経営者がこういったものに意味があると感じてしまうのも、不安やプレッシャーにより冷静な判断力を失っているからです。

胡散臭いカルト宗教にハマるのと同じ精神状態になっているのです。

経営コンサルタントにも騙される

せっかく経営者が集まっているなら、もっと具体的かつ即効性のある情報のやり取りをすべきです。

「具体的な話では考える力が身につかない」という人もいますが、こういうタイプとは関係を切ったほうが良いでしょう。

本人に知識がなく大した答えを持っていないのを抽象的な内容で誤魔化そうとしているだけなのです。

この手の人間に具体的なアドバイスを求めても「商品パッケージの色を変えましょう」程度のものしか出てきません。しかもそれを実践して効果が出るかも分からないのです。

具体的かつ有効な答えが出せるというのは最低限の水準です。そこにさえ到達していない人間が師匠の如く「自分の頭で考えなさい」などと誤魔化しているだけの勉強会が非常に多いです。

「〇〇論」という抽象的な話は数式も出て来ませんし、頭を使わなくてもレベルの高いことをしている気分になれます。

しかし、そんなことを繰り返していても会社の業績は伸びません。

それに、そういった勉強会で分かった気になってしまう経営者はコンサルタントにも騙されやすいので注意したほうが良いです。

具体的なアドバイスができないコンサルタントほど、「社長は何をすれば利益が出ると思いますか?」とコーチング的な声掛けで誤魔化そうとするのです。

経営者の読書会とドラッカー

最後にちょっと余談を。

あくまでも私の個人的な考えなので、あまり真に受けないでほしいのですが…

経営者の勉強会などでピーター・F・ドラッカーの本が使われるのを見掛けることがあります。読書会をしていることもあります。

確かにドラッカーは有名な経営学者です。

しかし、彼の著書が経営者の勉強会に適したものかというと疑問です。

経営を勉強するというのは科学として捉えるということだと思うのですが、ドラッカーの本はちょっと違うのではないかと。

経営者の自己啓発のような類ではないでしょうか?

捉え方は人それぞれですし、単に私が無知なだけで、「経営学の基本はドラッカー」というのがアカデミズムの世界ではスタンダードなのかもしれませんが。(その可能性は限りなく低いと思いますが)

少なくとも私が日本語で読んだ文献の範疇でいうと、良いことは言っていますが、実践に引っ張って来るのは難しいのでは?というのが正直な感想です。

『実践する経営者』という著作がある人に対して申し訳ないですが…。

まあ、でも好みの問題なのかもしれません。読みやすいのは間違いないです。

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