M&Aのしつこい営業電話が来たときに嘘を見破った話

ここ数年で中小企業のオーナー社長のもとにM&Aの営業電話が掛かってくることが増えました。

その内容の多くは「会社を売りませんか?」というものです。買収よりも売却の打診のほうが圧倒的に多いです。

私がコンサルティングをしている中小企業の社長達にもよく掛かってきます。

このようなしつこい営業電話を受け続けていると「自社が買収のターゲットにされているのではないか」と不安に思う社長もいます。

しかし、大抵のM&Aの営業を掛けてくる会社は帝国データバンクや東京商工リサーチなどのデータを基に上から順番に掛けているだけです。

すでに買収したいという企業があり、そこからの依頼で連絡をしているというパターンはほとんどありません。

M&Aの仲介会社に問い合わせたときのこと

実際に私は顧客企業の社長が「買いたがってる会社があるような口ぶりなんだけど」とあまりにも心配するので営業をしてきたM&A仲介会社に直接問い合わせたことがあります。

もちろん彼らが「売ると言ってもらえれば買ってくれる会社を探しますよ」と正直に答えてくれることなどありません。

すでに買収したいという会社があると言ったほうがオーナー社長が検討してくれる可能性が高くなることを知っているからです。

そこで私はカマを掛けて「一番の狙いは当社の小売り事業ですか?」と聞いてみました。

すると相手の担当者は「はい。小売り事業も魅力ですし、それも含め会社全体をということです」と答えました。

この時点で嘘をついていることがハッキリと分かりました。なぜなら私の顧客企業は小売り事業など行っていないからです。

このように買収したい会社があるようなことを匂わせていたとしても、嘘であることのほうが多いのです。

M&A件数4,000件に対し手掛ける会社は2,000社以上

そもそもなぜこんなにもしつこくM&Aの営業電話をしてくるのでしょうか?

それは日本ではまだM&Aの市場が発展途上だからです。

国内のM&A件数は約4,000件前後です。これはニュースになるような大型案件から1億円未満の小規案件まで含んだ数字です。

これに対してM&Aの仲介やアドバイザリーを手掛ける会社は中小企業庁の制度に登録しているだけでも2,000社以上あります。

この数字はM&Aを本業としない銀行や会計事務所の他に個人事業主も含むものですが、それでも競争の激しい業界ということが分かります。

自分たちで案件を創出できなければ儲けることができないのです。

「会社を売却したい」と言うオーナーは少ない

中小企業のM&Aにおいては「売りたい」という会社のほうが少ないです。

なぜなら本当に売りたいと思っていてもオーナー社長が自らそれを表明することは少ないからです。

買いたい人と売りたい人の数は同じかもしれませんが、意思表示をする人の数でいえば売りたいという人は圧倒的に少ないのです。

日本ではいまだに「会社の売却は社員を裏切る行為」という感覚を持つ人が多いことが理由と考えられます。

そのためM&Aを生業とする会社は必死で「会社を売ってください」という営業をかけるのです。

売りたいというまともな会社さえ見つかれば買ってくれるところを見つけるのはそれほど難しくないからです。

胡散臭い会社も多い

ちなみにM&Aの仲介手数料は高額です。

まず最低手数料は500万円から1,000万円ほどです。

それにプラスして成約金額ごとに一定率を乗じるレーマン方式という方法で計算した金額が発生します。

会社によって手数料は異なりますが10億円以上で成約させたときに1億円ほどの手数料を得られる率を設定しているところが多いです。

これだけ儲かるため質の低い会社も多く参入しており、不動産会社がマンションの売買をするような感覚でひたすら営業をしている会社もあります。

このような会社に仲介を依頼してしまうと不利な瑕疵担保条項を付帯されることもあり売却後に損害請求をされるリスクもあります。

怪しい仲介会社に騙されないよう注意しましょう。

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