コンプライアンス意識の低い会社にしてしまう社長の口癖

企業活動においてコンプライアンスといえば「法令順守」という意味で使われることが多いです。

最近では法を守ることだけではなく、倫理観や道徳観も含めて考えられるようになりました。

コンプライアンス意識の低い企業は社会的評価が下がり、やがては存在そのものが許されなくなります。

社員にもコンプライアンス意識を持ってほしいと考えて弁護士を招いて研修をしたり、コンプライアンス委員会を設置するなどの対策を講じている企業もあるでしょう。

しかし、そういった努力をしても社長や管理職が無意識にしている言動のせいで社員のコンプライアンス意識が低下することもあります。

コンプライアンス意識を低下させる口癖

社員のコンプライアンス意識を高めたいと考えているなら社内で絶対にしてはいけない話があります。

それは何かと言ったらお金の話です。

口癖のように「金、金、金」と言う社長や管理職がいますが、社員のコンプライアンス意識を低下させる要因です。

企業経営にお金はつきものですからその話をするなというのは無理だと思うかもしれませんが安心してください。

ここでいうお金の話とは売上高や純利益のことではありません。下品なお金の話のことです。

たとえば高級車や高級時計を買ったときにそれがいくらしたとか、飲み屋でいくら使った、ギャンブルでいくら儲けたという話のことです。

また売上の話は大丈夫といっても社長が「お金儲けが全て」と言ったことを主張したり、社員に厳しい数字のノルマを課すのもダメです。

こういった下品なお金をイメージさせられると人間の脳は道徳心を失うのです。

それによってコンプライアンス意識は低下し、非倫理的な行動をしたり横領などの違法行為に手を染めることもあります。

ハーバード大学の実験

お金の話が道徳心を失わせるということはハーバード大学のマリアム・コウチャキ博士らの実験からも分かっています。

この実験ではまず参加者を2つのグループに分けて、片方にはお金に関係する文章を作ってもらい、もう片方にはお金と関係ない文章を作ってもらいました。

これによって、お金を連想するグループとしないグループができます。

その後で13個のシナリオを読ませる。シナリオの内容には「自宅のプリンタの紙がなくなったので会社から何枚か持ってくる」など非道徳な行為も含まれています。

そしてそのシナリオを読んだ後で自分がそこに書かれた行動を取る可能性はどれくらいあるか?という質問をしました。

すると最初にお金を連想させられたグループの人間ほど非道徳的な行動を取る可能性を高く回答することが分かったのです。

他の実験では会社の利益のために違法に取得した機密情報を教えてくれる候補者を採用したいと思うか?ということも質問しました。

こちらも同様に最初にお金を連想させられたグループはそういう人物でも雇おうと思う可能性が高いということが分かりました。

なぜお金が人を狂わせるのか?

これらの実験から分かることは人間はお金が手に入るかどうかに関係なく、お金のことをイメージしただけで道徳心が下がるということです。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

それはお金をイメージすることで社会との関係を意識しにくくなったり、自分自身のお金の不安が喚起されることで、個人的な利益の追求に走りやすくなってしまうからではないかと考えられます。

その結果「道徳的にどうか?」というよりも「利益になるかどうか?」という基準で判断してしまうということです。

これは私の個人的な経験という狭い範囲での感覚ですが他人の持ち物を見て「その時計いくら?」とか「年収いくら?」などと不躾に聞いてしまうような社長がいる会社は社員のコンプライアンス意識も低い気がします。

そんな社長だからもともとコンプライアンス意識の低い人間しか入社しないという可能性もありますが…。

とにかく社員のコンプライアンス意識を高めたいのであれば、下品なお金の話はしないようにすることです。

参考文献:Maryam Kouchaki, Kristin Smith-Crowe, et al. (2013). Seeing green: Mere exposure to money triggers a business decision frame and unethical outcomes.

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