ブラックストーン・グループの会長が採用面接で行う「空港テスト」とは

履歴書と面接だけでその人物が優秀かどうかを見抜くのは困難です。

自称採用のプロのような人事担当者もいますが、たいていはハッタリです。

その人間が確実に優秀な人間を見抜けるなら社内に無能はいないはずです。規模の大小を問わず無能がいない会社など滅多に存在しません。

そもそも確実に人材を見抜く能力があるならベンチャーキャピタルでも立ち上げて大儲けしているはずです。

とにかく採用は難しいのです。

特に中小企業が優秀な人材を採用するのは難しいです。

予算も知名度もないのでそもそも応募してくる人数も少ないのです。

応募者全員が無能という可能性さえあります。

ならば、何を決め手に採用すれば良いのか?

それは「好きか嫌いか」です。

ブラックストーン・グループの会長の採用面接

世界的ななPEファンドのブラックストーン・グループという会社があります。

M&Aのニュース等でもよく名前が出ているので有名ですが。

この会社の創業者であるスティーブ・シュワルツマン会長が書いた『ブラックストーン・ウェイ』という本を読んだことがあります。

本書の中で採用について触れている箇所があるのですが、シュワルツマン会長は面接のときに「空港テスト」というものをするそうです。

どのようなものかというと、飛行機が遅れて空港で足止めされたとしたら、この志望者とふたりきりで待つ気になるか?ということを自分自身に問いかけるというものです。

要するに人として好きになれる相手かどうかを見極めるということです。

ブラックストーン・グループのような超一流ファンドに応募する人間は優秀なのは当たり前です。

しかし、能力だけを見て雇ってしまったら組織が機能不全になります。

社風や他のメンバーとの相性が悪ければ皆が不幸になってしまいます。

メンタルの状態が仕事のパフォーマンスを高くも低くもします。誰と働くかはそれに影響を与える大きな要因です。

実際にブラックストーン・グループではどんなに才能があっても人柄が良くない人間は雇わないそうです。

無礼な人間がいると他の社員は手を抜いてしまう

採用において人柄まで重視する必要があるのは100兆円規模の運用資産を持つファンドに限ったことではありません。

むしろ規模の小さな中小企業こそ大切にしなければなりません。

社員数が少ない分、1人が全体に与える影響は大きくなります。

礼儀正しさや誠実さというと古臭く感じるかもしれませんが、組織心理学や産業心理学では良く出てくるキーワードです。むしろ最近のトレンドとさえいえるかもしれません。

社内に無礼な人間が一人いるだけで、他の社員はやる気を失い、仕事の手を抜いてしまうことも研究から分かっています。

また、礼儀知らずな人間は会社への不満を外でも言いふらすので評判が悪くなるというリスクもあります。

『腐ったみかんの方程式』は組織においてはしっかり当てはまる

人として好きになれる社員を採用することは経営者であるあなたにとっても良いことです。

人間は感情の動物です。

実績を上げた嫌な奴より、実績はイマイチだだけど良い奴のほうが可愛いと思うものです。

他の社員も同じ気持ちになりやすく、一生懸命に面倒を見るのでやがては実力がついて実績を上げてくれるようになります。

逆に嫌な奴はどれだけ実績を上げても視界に入るだけで嫌な気分になります。これは脳がそうなっているのですから仕方ありません。

嫌いな人間を雇ってしまったら自分の会社なのに常にイライラしていなければならなくなります。

怒りは視野を狭めるのでクリエイティビティを失わせます。そして仕事にも悪影響を及ぼします。

それに実績を上げた嫌な奴が他の社員に与えたマイナス影響を考えたら、いないほうが全体ではプラスというケースもあります。というより、このパターンはかなり多いです。

金八先生に怒られそうですが『腐ったみかんの方程式』は組織においてはしっかり当てはまります。

腐ったみかんを雇ってはいけません。他の社員まで腐ります。

参考文献:『ブラックストーン・ウェイ』(翔泳社),スティーブ・シュワルツマン(著),熊谷淳子(訳)

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