社員のやる気を引き出す方法は「仕事の意味」を認識させること

ここ最近は経営コンサルティングの一環としてクライアントのウェブサイトを作っている時間が長いです。

そこに載せる記事も私が書いているのですが、門外漢の分野なので意外と骨の折れる作業です。

あまり興味を持てない内容を書くときなどは退屈に感じてしまうことさえあります。

そんなことをしている時に自分でも不思議な行動を取っていることに気づきました。

記事を投稿する度にその記事だけではなく前日に公開した記事なども含め、パソコン画面やスマホ画面で何度も確認してしまうのです。

誤字脱字を確認しているわけではなく、単に眺めているだけなのです。

そんなことせずにどんどん次の記事を書いたほうが効率的なのですが、見てしまいます。

仕事の意味を見出したい

なぜこんなにも効率の悪いことをしてしまうのかというと、仕事の意味を見出したいからです。

作ったばかりのウェブサイトというのはほとんど閲覧されることがありません。

ですから問い合わせも来ません。無反応なのです。

するとやる気が落ちてきます。

クライアントの売上を増やすという大きな目標の中では意味を持つ大切な仕事です。

しかし、ひたすら記事を書くという同じ作業を繰り返しているとその意味を見失うのです。

なので過去の記事を見返すことでウェブサイトが完成に近づいているという感覚を持ち、意味のある仕事をしていると確認したくなるのです。

社員のモチベーションは会社の業績を大きく左右する

私は誰かに雇われている立場ではないので自分の裁量で仕事を進めることができます。嫌な仕事は断ることもできます。

また、過去のウェブサイト制作の経験から、時間が経てばユーザーからの反応があるということも知っています。

仕事のモチベーションを高く維持するには恵まれた環境といえます。

そんな環境の私でさえ同じ作業を繰り返していると意味を見失いやる気が低下することがあるのです。

これが会社に雇われている立場の人間であればもっと大変でしょう。

自分の会社員時代を思い出しても新人研修中に体験した工場でのライン作業は日に日にやる気を失わせるものだった気がします。

「社員のやる気がない」と嘆く経営者は多いですが、どんな単純作業でも「仕事の意味」を認識させることから始めるべきでしょう。

社員のモチベーションは会社の業績を大きく左右するのです。

行動経済学者が行ったレゴブロックの実験

仕事に意味があると思えるかどうかが仕事のやる気に影響することを示した有名な実験があります。

MITスローン経営大学院のダン・アリエリー博士らが行ったものです。博士の書いた『予想どおりに不合理』という行動経済学の本を読んだことのある人もいると思います。

博士らは参加者にレゴブロックを組み立てさせるという実験を行いました。

このとき1体組み立てるごとに報酬を支払いますが、組み立てた数が増えるごとに報酬は少しずつ下げられるという条件になっていました。

つまり1体目より2体目の報酬のほうが少なくなるということです。その後もどんどん下がります。

この作業をやらせるとき参加者を以下の2つの条件のどちらかに割り当てました。

  • 完成したレゴブロックを机の上に並べて置かれるグループ
  • 完成したレゴブロックを係員がすぐに分解し箱に戻されるグループ

要するに完成品をどうするかに違いを持たせたのです。

その結果どうなったでしょうか?

完成品を机の上に並べられたグループは平均で10.6体作りました。

一方で、完成品をすぐに分解されたグループは平均で7.2体しか作りませんでした。

仕事が実績として目に見えればやる気になりやすい

なぜこんなにも差が出たかというとその作業に意味を見出せたかどうかが影響したからです。

完成品を並べられたグループは仕事の実績が可視化され続けていたのでやる気が保たれたのです。

それに対し、すぐに分解されたグループは「どうせすぐに壊される意味のないものを作っている」と感じてしまいやる気が下がってしまったのです。

これは会社の仕事でも同じことがいえます。

自分の仕事が実績として目に見えればやる気になりやすいのです。

工場であればその日の生産個数を表示するとか、その仕事が会社全体の目標の中でどんな貢献をしているのか、明確に認識させることが大切です。

『3人のレンガ職人』

『3人のレンガ職人』という話があります。要約すると次の通りです。

レンガを積んでいる職人に旅人が「何をしているのか?」と尋ねた。
1人目の職人は「レンガを積む退屈な作業をしている」と答えた。
2人目の職人は「家族を食べさせるためにレンガを積
仕事している」と答えた。
3人目の職人は「人々に安らぎを与えるために歴史に残る大聖堂を作っている」と答えた。
最も活き活きとしているのは3人目のレンガ職人だった。

全く同じ作業をしていても、それをどう捉えるかで仕事の意味は変わるのです。

経営者は社員を3人目のレンガ職人にしなければなりません。

参考文献:Dan Ariely, Emir Kamenica, Dražen Prelec,Man’s search for meaning: The case of Legos,Journal of Economic Behavior & Organization,Volume 67, Issues 3–4, 2008.

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