「本当のお金持ちは質素」という嘘はなぜ広まったのか?

本当のお金持ちは無駄遣いをせずに質素に暮らしていると言われることがあります。

ブランド物や車にお金を掛けないのだと。

しかし、これは嘘だと思います。

少なくとも私の見る限り本当のお金持ちだからブランド物を持たないなどということはありません。

富裕層の消費スタイルはバラバラ

仕事柄、富裕層といわれる人と接する機会が普通の人よりも多いと思います。といっても何百人も知っているわけではありませんが…

どれくらいを富裕層といえば良いのか分かりませんが、資産が数億から数十億くらいとします。(残念ながら数百億円の資産を持っている人は顧客にいないので)

ちなみになぜ個人資産が分かるかといえば、会社の財務諸表からそれくらいだろうと判断できるからです。滅多にありませんが話の中で教えて貰えることもあります。

そしてそういったお金持ちの消費スタイルを見る機会も多いのですが、これは人によってバラバラとしか言いようがありません。

質素倹約なタイプもいれば、派手にお金を使うタイプもいます。

プリウスに乗っている人もいれば、フェラーリに乗っている人もいます。

ユニクロを着ている人もいれば、Louis Vuittonのロゴが入った服を着ている人もいます。

お金持ちだから質素とも限りませんし、派手とも限らないのです。

お金持ちは見栄のための金は使わない?

お金持ちは見栄のためのお金は使わないと言われることもあります。しかし見栄のためにお金を使う人もたくさんいます。

LVMH会長のベルナール・アルノー氏が高級ブランドに進出したのも、富裕層向け不動産を扱っているときに、お金持ちは見栄のために金を使うことに気づいたからでもあります。

確かに見栄のために使わない人もいます。だからといってブランド物を買わないということではありません。

自分が欲しいと思えば見栄のためのような商品でも買うのです。もちろんファッションに全く無頓着な人もいます。

安い服を着て貧乏と思われようが、一目でブランド品と分かる服を着て成金と思われようが見栄っ張りと思われようが気にしないのだと思います。

ニューヨーク大学の心理学者ピア・ディーツェらが参加者に(視線の動きを記録できる)グーグルアイグラスを着用させて街中を1ブロック歩かせるという実験を行っています。

それによるとお金持ちほど他人を見ないことが分かっています。お金持ちは他人に依存する必要がないので、他人からどう思われるか気にしないのです。

成金かどうかは関係ない

成金はブランド好きですが、代々のお金持ちはそんな下品な金遣いはしないと言う人もいますが、これも人によります。

先祖代々のお金持ちでもブランド物が好きな人はたくさんいます。

代々のお金持ちで質素なのは地方在住で僻みによる嫌がらせを避けたいタイプや、相続した資産を大きく増やすほどの経営センスがないと自分で理解しているタイプではないでしょうか。

相続の度にとんでもない税金を課せられ資産が減っていけば質素に暮らそうと思うのは自然です。

なぜ「本当のお金持ちは質素」という話が広がったのか?

ではなぜ「本当のお金持ちは質素」という話が広がっているのでしょうか?

理由の一つは一部のお金持ちがそういった生活をしているからでしょう。

たとえば有名な投資家のウォーレン・バフェットは質素な暮らしで知られています。

スティーブ・ジョブズも毎日同じ服を着ていたのは有名です。(服選びにリソースを費やさないという理由ですしトップスはブランド物でしたが…)

大金持ちなのに質素というギャップが人々の印象に強く残るのです。

ですが、最も大きな理由は庶民の嫉妬だと思います。

派手なブランドを持っている人間に対し「成金だ!本当の金持ちはブランドなんか持たずに質素」と言うことで心の安定が図れます。

心の中だけのことではありますが、自分自身を本当の金持ちと同じレベルに置くことで、成金を下に置けたような気分になるからです。

『お金持ちになるための本』のようなものにも「本当のお金持ちは質素」と書かれていることがありますが、これも読者層が庶民であり、そういう話のほうがウケると分かっているから書いているのだと思います。

この手の本の著者の中には税理士や元税務署職員もいますが、彼らほど多くのお金持ちと会っていれば、色々なタイプがいることくらい分かるはずですが、それを書いてしまったら売れないのです。

アメックスのセンチュリオンの雑誌の中身

ここまでの説明は私の知っている範囲での話なので統計的なサンプルとしてはアテになりません。

これを以って「本当のお金持ちは質素というのは嘘」と言い切ることはできないでしょう。

そもそも「本当のお金持ちはこうだ」と統計的に有意といえるサンプルを得られるほどに本当のお金持ちの知り合いがいるとしたら、私も本当のお金持ちになっているはずです。

残念ながら私はお金持ちではありません。

しかし、富裕層ランキングで上位にいるような人間を見ても様々なタイプがいることは分かると思います。

アメックスのセンチュリオンを持っている人にだけ配られているという雑誌を見せてもらったことがあるのですが、ドン引きするほど高い腕時計やアクセサリーが載っていました。

やはり本当のお金持ちは質素などということはないのだと思います。

成金にさえなれなかった人間が成金をバカにするな

長々と書くつもりはなかったのですが、こんなにも書いてしまいました。

そもそもなぜ今回の話を書いたかというと、あまり儲かっていない社長ほど高級車やブランドを持っている他の社長を批判しているように感じたからです。

「あんな車に乗ってればいつか落ちぶれる」「ロレックスなんて成金の時計だ」などと言う人が多いです。

自分の会社が儲かっていないことのストレスがそのような発言につながるのでしょうが…

成金にさえなれなかった人間が成金をバカにするのは恥ずかしいことです。

他人を僻んでいる暇があったら、少しでも会社の利益を増やすことに時間を使いましょう。

ちなみにあなたが本当のお金持ちでブランド好きでも、社内でそういった下品なお金の話をすると社員のコンプライアンス意識が低下するので注意したほうが良いでしょう。

参考:Pia Dietze, Eric D. Knowles. (2016). Social Class and the Motivational Relevance of Other Human Beings: Evidence From Visual Attention.

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