大企業の副業解禁が義務化されれば中小企業の倒産を引き起こす

ちょうど去年の今頃ですが、厚生労働省が企業に対して副業を認める条件などの公表を求める方針というニュースが日経電子版に出ていました。

【参考】2022年6月24日 日経電子版「副業制限なら理由公表 厚労省、解禁加速へ企業に要請【イブニングスクープ】

副業を禁止したり制限する場合はその理由も開示するように促すということです。

つまり「企業は社員の副業を認めるのが当たり前で禁止するほうが異常」という世の中の流れが出来つつあるということです。

さらに機運が高まれば副業解禁が義務化される可能性さえあります。解禁の義務化というより、副業禁止を禁止する法律やガイドラインが制定される可能性があります。

現状でも、雇用契約を結んでいるだけという関係の社員に対して、他の仕事をするなというのは少し無理があるようにも思えます。

そもそも、今の法律でも就業規則や雇用契約で禁止していなければ社員の副業に口出しは出来ません。

実際に自分も会社員だった頃はずっと副業をしていました。副業が認められていたのではなく、禁止されていなかったからです。

副業解禁の流れは従業員にとっては良いことだらけです。収入が増えますし新しいスキルが身についたり人脈が広がりもします。

しかし中小企業や個人事業主にとっては倒産につながりかねないバッドニュースです。

副業解禁によってライバルが増える

副業解禁によって中小企業や個人事業主はライバルが増えることになります。なぜなら中小企業のビジネスの中には個人でも出来てしまうものも少なくないからです。

例えばウェブサイトの制作やちょっとしたアプリの開発などは個人でもできます。中小企業が事業としてやっていることを趣味で行っている会社員もいます。

副業解禁になることでそれらをビジネスにしようとする人間が増えれば顧客の奪い合いになります。

副業でやっている人間は利益にそこまでシビアになる必要はないので、相場を無視した安い価格を提示し価格破壊が起こるかもしれません。

それなりの規模の仕事であっても、副業でやっている人間同士が案件ごとにチームを組んで請け負う可能性もあります。

特に顧客の無知に付け込んでボッタクリが出来ている業界は色々なことがバラされるので儲からなくなるでしょう。

大企業の社員vs中小企業

ほとんどの企業が副業を認めても自社の資産を使うことは認めないはずです。

そもそも自社業務と競業するような副業は禁止にするでしょう。ここは法律も認めてくれると思います。なので本業での人脈も役立てる機会は少ないです。

しかし、大企業に勤めている人間なら誰でも使える大きな資産があります。それは大企業に所属しているという保証です。

日本で最も時価総額の大きな会社はトヨタ自動車です。例えばトヨタ自動車の社員が副業で経営コンサルタントを始めたとします。

社業とは関係なさそうですし、コンサルタントとしての実力があるのかも未知数です。

ではこの社員が中小のコンサルティング会社と競合したときに負けてしまうのでしょうか?

別の言い方をするなら「一流有名企業の社員」と「無名な中小企業」の勝負ではどちらが有利なのか?ということです。

ちなみに私は独立前にサラリーマンをしていましたが勤務先の中には無名な会社もありました。その時から副業をしていましたが専業の会社と競合しても仕事を貰えることはよくありました。

無名な会社の社員の副業でさえ専業の会社に勝てるということです。有名な大企業の社員ならもっと簡単に勝ってしまうでしょう。

つまり顧客は「副業でやっている個人よりもやっぱり専門の会社じゃなきゃダメだよ」などとは思ってくれないのです。

それどころか「トヨタ自動車に入社できるくらいだから優秀なのだろうし、身元もしっかりしているから安心だ」と考える可能性の方が高いのです。

副業解禁の流れを自分たちも利用する

大企業の副業解禁がどれほど恐ろしいことか分かったでしょうか?

会社員であっても複数の仕事を持つのが当たり前となる流れを止めることはもはや不可能です。

その流れの中で中小企業が生き残るには徹底した差別化戦略が必要です。ブランド、製品、販売チャネルでオリジナリティを出すための方法はあります。

そしてもう一つは副業解禁の流れを自分たちも利用することです。

正社員としては自社に入社してくれないような優秀な人材であっても、副業としてであれば参加してくれる可能性は高いです。(もちろん大手有名企業の中には誰でも入れるようなレベルの会社もありますし一流企業勤務でも無能な人間はいますからその見極めは大切ですが)

そういった外部のリソースをうまく取り入れることは中小企業にとって今後ますます重要になるでしょう。

ただし、あくまでも一部の知恵を借りるに留めなければなりません。間違っても大企業を引退した人間を経営層として引き抜こうなどと考えてはいけません。プロ経営者は無能なのが相場です。

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