支払いが遅れる会社との取引を切るべき本当の理由

支払い期限を一日でも遅れる会社とは取引を切ったほうが良いでしょう。

急には切れないでしょうから徐々に減らしていくべきです。

取引先の入金遅延は自社の資金繰りを厳しくするだけではありません。

社長の判断力を鈍らせる要因となります。それがやがては業績低下、破産へとつながることもあります。

お金の心配が脳の認知機能を低下させる

取引先からの入金が遅れると経営者であるあなたは「いつまでに払ってもらえるだろうか?本当に払ってもらえるだろうか?」と不安やストレスを感じます。

金額が大きければそのプレッシャーは相当なものです。

実はこのような状態になると脳の認知機能が低下し、経済的な判断を正しく行えなくなることが分かっています。

それにより必要な投資をしなくなったり、修繕すべきものへの出費をケチるといった致命的な経営判断につながることもあります。

車の修理代について想像させてから認知機能を測定するテストを受けさせる

経済学者のアナンディ・マーニーらがショッピングモールに来ている客に参加してもらって興味深い実験を行っています。

まず参加者に自動車が故障したときのことを想像してもらいました。

「あなたの車は故障しました。修理するのに○○ドルかかります。一括で払うかローンを組むか修理自体をしないことにするか?考えてみてください」と言って想像してもらったのです。

このときにかかる修理代は、1つののグループには150ドルと言い、もう1つのグループには1,500ドルと言いました。

そして、どうするか考えてもらった後で認知機能を測定するテストを受けてもらいました。

金の心配に脳のリソースを割いたため、他のことに使うリソースが減った

その結果どうなったでしょうか?

実はこの実験では参加者に年収のアンケートもしているのですが、それによって異なる結果が出ました。

まず、年収の高い人たちは修理代が150ドルといわれたグループも1,500ドルといわれたグループも認知機能を測定するテストの結果に違いはありませんでした。

しかし、年収の低い人たちは修理代が150ドルかかると言われたグループよりも、1,500ドルかかるといわれたグループのほうがテストの結果が悪かったのです。

なぜこのようなことが起こったのでしょうか?

それは年収が高い人にとって1,500ドルは負担に感じないのでストレスは起こりませんでしたが、年収が低い人にとって1,500ドルは負担に感じるためストレスが生じたからです。

たとえ仮のシチュエーションを想像しただけであっても、自分自身の実際の経済状況の心配が想起されてしまったのです。

そして脳がその心配をすることにリソースを割いてしまったため、問題を解くためのリソースが減ってしまったのです。つまり認知機能が低下したということです。

お金の心配は自分の子供にも悪影響を及ぼす

自分自身のことに置き換えてみてください。

取引先が支払ってくれるだろうか?と心配することは、そこに必要以上の脳のリソースが割かれてしまうということです。

経営者というのは他にも判断すべきことが山ほどあります。しかしお金の心配をしているせいで、それらの判断に割くべき認知のリソースは少なくなっているのです。

そのような状態で判断を下したらどうなるでしょう?正しい判断ができるでしょうか?

余談ですが、お金の心配ばかりしている親は頭がそれでいっぱいになるので子供に話しかける時間が減ります。会話をするにしてもいつも同じ言葉ばかり使いがちになります。

その結果として子供の語彙力が育ちにくいというカリフォルニア大学の研究もあります。貧困が連鎖する理由は色々ありますがこういったことも要因の一つかもしれません。

家族のためにも余計なお金のストレスは溜めないほうが良いのです。

参考文献:Anandi Mani, Sendhil Mullainathan, et al. (2013). Poverty Impedes Cognitive Function.

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