会社を大きくするには「幻想の真実効果」を使え

会社を大きくしようと思ったら、ビジョンや目標、計画といったものを策定します。

そしてそれを社員にも浸透させ、全員が同じ方向を向いて日々の仕事に取り組む必要があります。

同じ能力の社員でも、熱意によってパフォーマンスは大きく変わるので、本気になってもらわなければなりません。

しかし、これは非常に難しいことでもあります。

企業規模を拡大していくための計画の中には、現状ではあり得ないような高い売上目標が設定されることもあります。

多くの社員はそれを単なる夢物語と考えます。嘘だと思っているのです。達成できると信じないのでモチベーションも行動も変わりません。

会社を大きくするためには社員にそれを信じてもらう必要があります。

そのためのシンプルな方法としては何度も熱く語り続けることです。

それによって、社員は本当にそれが達成できるものなのだと思うようになるのです。なぜなら人間の脳がそうなっているからです。

言い方は悪いですが一種のマインドコントロールです。

幻想の真実効果とは

人間の脳は嘘であっても繰り返し見聞きすると本当であると信じてしまうことがあります。

これを心理学で「幻想の真実効果」といいます。

政治家の演説や企業のコマーシャルなどでもよく使われるテクニックです。フェイクニュースを信じてしまうのもこの効果の影響です。

なぜ嘘でも繰り返されることによって信じてしまうのでしょうか?

それは脳の機能に原因があります。

脳は初めて聞いたことよりも2回目に聞いたことの方が処理が楽なので理解しやすくなります。さらに3度目、4度目と繰り返されるとさらに容易になります。

すると簡単に理解できるということは本当のことなのだろうと思ってしまうのです。脳はサボり癖があるので楽な方へと流されるのです。

嘘であってもこのような効果が出るのです。会社として正式に定めた目標であればもっと強い効果となります。それは現実的ではないかもしれませんが嘘でもないからです。

経営者から何度も「2030年に売上高が1,000億円になる」と言われ続ければ、それを疑うほうが面倒になるので信じるのです。

タイムマシンの開発成功は信じないが売上高1,000億円の達成は信じる

「幻想の真実効果」が発生するにはその内容が自分の知っているものと一致していることも重要です。

「空を飛べる人間がいる」ということは自分の理解とは一致しないため、何度繰り返されても信じることはありません。

しかし「100m走で8秒台が出た」というニュースは世界記録が更新され続けているという知識があるのでたとえ嘘でも繰り返されると信じてしまいます。

「うちの会社はタイムマシンを開発できる」と言い続けても信じませんが、「2030年に売上高1,000億円を達成できる」と言い続けたら信じるのです。

会社は成長するものという知識があるからです。たとえ自社の売上高が伸びていなくとも、ニュースなどで他社の増収増益のニュースを見ていれば信じるのです。

信じやすさに頭の良し悪しは関係ない

幻想の真実効果は1977年にテンプル大学のリン・ハッシャーらの実験により最初に示されました。その後の追試でも再現性が確認されています。

最近では2019年のハーバード大学のナディア・M・ブラシエらの実験によってもその効果が明らかにされました。

この実験では参加者に「世界最速の動物はチーターです」といったような文をいくつか見せました。その中には本当のことと嘘が混ぜられていました。

その後で真実かどうかの評価をしてもらったところ、嘘の内容でも繰り返されることによって本当だと思ってしまう傾向が見られたのです。

この実験の結果には参加者の知性や認知スタイルの影響はありませんでした。つまり頭の良し悪しに関係なく幻想の真実効果は起こるのです。

会社を大きくしたければ社員がそれを疑うのが面倒になるまで、語り続けなければなりません。

余談ですがあまり売上高ばかり強調するのはオススメしません。それはあくまで手段として伝えるべきです。

売上高を増やすことで社員が幸せになるなど、その先に何があるか見えなければ社員はただの駒として扱われている気分になってしまうのです。

参考文献
Lynn Hasher,David Goldstein,Thomas Toppino(1977)Frequency and the conference of referential validity.
Nadia M. Brashier,Emmaline Drew Eliseev,Elizabeth J. Marsh(2019)An initial accuracy focus prevents illusory truth.

タイトルとURLをコピーしました