フェアトレード商品を販売するための心理学

フェアトレード商品の販売は簡単ではありません

このチョコレートは児童労働をさせていない農園のカカオを使っています…

このコーヒー豆は発展途上国から搾取していません…

とアピールしても顧客が「それは素晴らしい、じゃあ買おう」とはなり難いです。

NTTコムリサーチのデータによるとフェアトレード商品を買う理由として最も多いのは「商品そのものを気に入ったから」だそうです。

つまり商品自体に魅力がなければ、他の商品と競合したときに価格面で勝負できずに選ばれない可能性があるということです。

フェアトレードの商品を売るテクニック

フェアトレードの商品を売るにはどうすれば良いのでしょうか?

ポイントは2つあります。

顧客に「自分は倫理観の高い人間」と思わせることと、商品の購入によって他者にどんな影響が出るかイメージさせることです。

それぞれについて心理学の面から説明しましょう。

「自分は倫理観の高い人間」と思わせる

「カカオ農園では幼い子供達が過酷な労働を強いられています」という説明をすると、多くの顧客は「許せないですね」という反応をします。

このとき「あなたは搾取を許せない倫理観の高いタイプですね」といったメッセージを伝えるのです。

するとフェアトレードではないチョコレートを買うという選択はしにくくなります。

なぜなら人間は「自分はこういうタイプ」という自己認識から外れるような行動を取るときに不快感を覚えるからです。このような心理状態を「認知的不協和」といいます。

つまり、フェアトレードでない商品を選択することで「認知的不協和」が生じる状態へと持っていけば良いのです。

また、せっかく作られた自分の良いイメージを壊したくないという欲求も生じるので、より効果的です。

これはフェアトレード商品だけではなく、健康に良い食品を販売するときも使えるテクニックです。

「健康に対する意識が高いですね」と言われたら、高くても健康的な食品を選ぶのです。

他者にどんな影響が出るかイメージさせる

人間というのは他者にどのような影響が生じるか具体的にイメージできると行動を変えることがあります。

例えば「このチョコレート買うと代金の一部が〇〇エリアの恵まれない子供達の教育に使われます」と言われると、買ってしまいます。

途上国への寄付を求める広告に現地の子供の写真やエピソードを伝えるものが多いのも、この効果を知っているからです。

もともと人間は他者に影響を与えたいという欲求を持っています。それによって快感を得るのです。

「読書家ですね」と言われるよりも、「私もあなたに影響されて本を読み始めました」と言われたほうが嬉しいのは、他者に影響を与えられたと認識できるからです。

世の中には影響を受けたい人よりも、与えたい人のほうが多いのです。

インスタを見ると数えきれないほどの自称インフルエンサーがいることからも分かると思います。

マックス・プランク経済研究所の実験

マックス・プランク経済研究所のアストリッド・マシーらが、他者にお金をどう配分するか決定させるゲームの実験を行っています。

この実験でも、相手にどのような影響が出るか分かっているシチュエーションのときほど、人間が利他的な行動を取るという結果になっています。

反対に影響が分からなければ利己的な判断をしやすくなることも分かっています。

人間は社会的な動物なのです。

「搾取は良くない」と訴えるよりも、「あなたの行動が社会にこんな影響を与えます」と訴えたほうが心は動くのです。

ホームページでどう訴求するか?

余談ですがフェアトレードの商品を買わない理由として最も多いのは「身近に扱う店舗がない」だそうです。

なのでインターネットを使っての販売は有効な戦略といえます。

ここで紹介したテクニックは対面での販売でなくとも応用できます。

フェアトレード商品を販売するホームページであれば、「このサイトに興味を持ったということはあなたは社会問題に対する意識が高い人」といったメッセージを発せば良いのです。

また、代金の一部がどのように社会に役に立つのか具体的に説明するページを追加することも効果的です。

ぜひこれらのテクニックを有効活用してもらいたいと思います。

フェアトレードの商品を販売するのに、心理学のテクニックを利用するというのは「フェア」でない気もしますが…

参考文献:Matthey, A.; Regner, T. Do I Really Want to Know? A Cognitive Dissonance-Based Explanation of Other-Regarding Behavior. Games 2011, 2, 114-135.

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